
「朝起きると口の中がねばつく」「なんとなく口が乾いて困る」――そんなお悩みはありませんか。
こうした症状は、ドライマウス(口腔乾燥)、つまりお口の中がうるおいを失っている状態かもしれません。
ドライマウスは、痛みのようにはっきりした症状ではないため、多くの方が「たいしたことではない」と受け止めていらっしゃいます。実際、当院でも「口が乾くので診てほしい」とご相談に来られる方は多くありません。別のご相談でお話ししているうちに「そういえば口の中もねばつくんです」と出てきたり、定期検診のときに「ちょっと口が乾く気がします」とお話しくださったりする、というのが実際のところです。
けれども、口の乾きは長い目で見ると、むし歯や歯周病のリスクを大きく引き上げる要因になります。今回は、豊田市の服部矯正小児歯科の院長として日々診療する立場から、口の乾き・ねばつきの背景と、放っておくとどうなるのか、そして当院でおこなっている対応についてお伝えします。
ドライマウスとは、唾液の分泌が減っている状態
ドライマウス(口腔乾燥)とは、簡単にいえば唾液の分泌が減っている状態のことです。
「唾液が減る」と聞いても、あまり深刻に感じないかもしれません。しかし唾液には、私たちが思っている以上に大きな役割があります。
自浄性(じじょうせい)
唾液が流れることで、お口の中の汚れや細菌を洗い流してくれます。
緩衝作用(かんしょうさよう)
食事のあとに酸性に傾いたお口の中を、中性に戻す働きです。これが「う蝕(むし歯)を抑える力」につながります。
食事と会話のサポート
食べものをまとめて飲み込みやすくする、話しやすくする、といった働きもあります。
つまり、唾液はお口の中を守ってくれる天然の防御液のようなものです。
なかでも強調しておきたいのが、自浄性と緩衝作用による「むし歯を抑える力」は、お口の健康を大きく左右するほど影響が大きいということです。ここは私が診療のなかで、とくに大切だと感じている点です。
唾液が減るということは、このむし歯を抑える力そのものが弱まってしまうということ。どれだけ丁寧にケアをしていても、土台となる守りの力が下がった状態で毎日を過ごすことになります。これがドライマウスの見過ごせないところです。
ドライマウスは40歳前後から増え、女性にやや多い印象があります
口の乾きを主訴として訴えられる患者さんは、40歳前後から増えてくるという印象があります。また、男性・女性で比べると、なんとなく女性の方が多いという感覚があります。
自分の所感としては、年齢が上の方ほどドライマウスは多いように感じています。
ただ、ここで大事なポイントがあります。口の乾きは、それ単独で発症するものではないということです。多くの場合、いくつかの要因が重なって症状として表に出てきます。
口の乾きの背景にあるもの
① ホルモンの変化・加齢
年齢や加齢の影響は確かにありますし、ホルモンの関係も影響していると考えています。更年期に「口が乾くようになった」と感じる方がいらっしゃるのも、こうした背景と無関係ではないでしょう。
そして、年齢とともに唾液の分泌量は減っていくため、程度の差こそあれ、乾燥は誰にでも起こりうるものです。ですから「乾いているから即異常」ということではなく、それによって毎日の生活にどれくらい支障が出ているかが大切になります。
② お薬の影響(特に多剤服用)
背景として見逃せないのが、お薬の影響です。
全身疾患をお持ちで、たくさんの種類のお薬を服用されている方は、ドライマウスになりやすいというのが私の実感です。口の乾きは、こうしたお薬の影響と併発する形で症状になっていることが多いのです。
③ 歯周病との関係
お口の中のねばつきには、歯周病も関係していると考えられます。
また、唾液が減るとお口の中の自浄性が落ちるため、プラークコントロール(歯垢の管理)に影響が出て、歯周病にも大きく影響します。歯周病と口の乾きは、お互いに悪循環をつくりやすい関係にあるといえます。
④ 口の乾きを特徴とする病気(シェーグレン症候群など)
シェーグレン症候群のように、口の乾きを特徴とする病気もあります。そのため、当院では問診の際に全身状態についても確認をおこないます。
シェーグレン症候群は、涙腺や唾液腺に炎症が起こる自己免疫疾患で、指定難病にもなっています。詳しくは難病情報センターの解説ページで一般の方向けに紹介されています。
ドライマウスを放っておくとどうなるのか
ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。
短期で見れば、口が乾くだけです。困るといえば困るけれど、我慢できないほどではない――だからこそ、多くの方が放置してしまいます。
しかし長期で見ると、歯周病やむし歯のリスクを大きく上昇させ、将来的に大きなトラブルを引き起こしやすくなります。
実際にこんなことが起こります。歯周病が進むと歯ぐきが下がり、歯の根(歯根)が露出してきます。歯根の表面は、エナメル質(歯の頭の部分を覆っている、いちばん硬い層)に覆われておらず、むし歯に対してとても弱い部分です。そこに唾液が減ってう蝕リスクが高い状態が重なると、むし歯ができてしまうのです。
「若い頃はむし歯なんて一本もなかった」という方が、年齢を重ねてから歯根のむし歯になる――これは私自身、実際に経験しているケースです。
こんなことはありませんか(セルフチェック)
次のような点が当てはまる方は、一度ご相談ください。あくまで目安であり、最終的な判断には診察が必要です。
- 朝起きたときなど、口の中がねばつく感じがする
- なんとなく口の中が乾く、乾いて困ることがある
- 歯科の検診で「口が乾いている気がする」と感じることがある
- 全身の病気で、複数のお薬を服用している
- 歯ぐきが下がってきた、歯が長くなったように感じる
- 以前はむし歯が少なかったのに、最近むし歯が見つかるようになった
当院での対応
まずはお口の中と全身状態を確認します
当院では、まず実際に唾液でどの程度お口が湿っているかを見ます。そのうえで、唾液のねばつきや歯垢のつき方もあわせて診て、総合的に評価していきます。
問診では、全身状態の影響が大きいため、今お持ちの病気や飲んでいらっしゃるお薬の種類を確認します。
なお、当院では唾液量を測る検査はおこなっていません。症状とお口の中の状態を診て判断し、必要と考えられる場合には専門機関をご紹介する方針をとっています。
むし歯・歯周病のリスクをコントロールします
ドライマウスそのものへの直接的な治療ではありませんが、フッ素塗布やPMTC(歯科医院でおこなう専門的なクリーニング)によって、むし歯のリスクをコントロールするご提案をしています。
唾液が減っている方は、防御力が下がった状態でお口を使い続けることになります。だからこそ、外から予防の力を補うことが意味を持ちます。
定期検診の間隔は基本的に通常どおりですが、歯周病やむし歯のリスクが高い方には、1か月ごとの来院をおすすめすることもあります。
入れ歯が当たって痛いなどの対応も
お口が乾いていると、入れ歯がこすれて痛むといったことも起こりやすくなります。お口の乾きそのものだけでなく、こうした日々のお困りごとにもあわせて対応していきます。
お薬が関係している場合
たくさんの種類のお薬を飲んでいらっしゃる方には、もとの病気の治療をしっかり続けることを提案することもあります。
病気の状態が安定すれば、お薬の種類や量を見直せることもあります。すると、お口の乾きが楽になる可能性もあるからです。
ただし、これは絶対にご自身の判断でおこなわないでください。 お薬を勝手に減らしたり、やめたりすると、もとの病気が悪くなってしまう危険があります。
お口の乾きが気になるときは、お薬を出している主治医の先生に相談してみてください。「口が乾くのですが、お薬の影響はありますか」と一言お伝えいただくだけで大丈夫です。
医科へご紹介する場合
次のようなときには、専門機関(医科)へご紹介しています。
- シェーグレン症候群など、全身疾患が背景にありそうなとき — 病気の本体がお口の中ではないため、医科に対応をお願いします
- 当院で対応をおこなっても改善せず、さらに患者さんが改善を望まれる場合
ご自身でできるケア
当院で患者さんにお伝えしている、日常でできるケアをご紹介します。
うがい・水分補給
気になったときにうがいをして、お口の中を湿らせるようにしましょう。水分は一度にたくさんではなく、こまめに少しずつとるのがおすすめです。
ここでひとつ大切な注意点があります。 乾きをうるおすつもりで、ジュースや砂糖入りのコーヒー・紅茶、あめなどを頻繁に口にすると、砂糖によってむし歯のリスクがさらに上がってしまいます。 もともと唾液が減ってむし歯になりやすい状態なので、ここは特に気をつけたいところです。水やお茶を選ぶようにしてください。
唾液腺マッサージ
唾液をつくる唾液腺を、外側からやさしく刺激する方法です。一般的には、次の3か所が知られています。
耳下腺(じかせん)
耳の少し前、上の奥歯のあたりの頬。指をあてて、円を描くようにやさしく回します。
顎下腺(がっかせん)
あごの骨の内側のやわらかい部分。親指でやさしく押し上げます。
舌下腺(ぜっかせん)
あごの先の裏側、舌の付け根の下あたり。親指でやさしく押し上げます。
食事の前などに、無理のない範囲でおこなってみてください。強く押しすぎないことが大切です。痛みが出るようであれば中止してください。
よく噛んで食べる
よく噛んで食べることも、唾液腺への自然な刺激になります。噛みごたえのある食材を献立に取り入れる、汁ものでいきなり流し込まずにしっかり噛む、といった工夫をしてみましょう。食事そのものが、唾液を出すトレーニングになります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 口が乾くくらいで歯医者に行ってもいいのでしょうか?
A. もちろんです。口の乾きは、患者さんご自身では重要な症状と感じにくいものですが、長期的にはむし歯や歯周病のリスクを大きく高めます。「たいしたことない」と思われる段階でご相談いただけるほうが、対策を立てやすくなります。
Q2. 年齢のせいなら、どうしようもないのでしょうか?
A. 加齢やお薬の服用が原因の場合、その原因そのものを取り除くことはできないこともあります。ただ、「自分にはドライマウスというリスクがある」と理解していただくだけでも、予防の面では大きな意義があると考えています。リスクを知っていれば、フッ素の活用や定期的な管理など、打てる手はあります。
Q3. 保湿スプレーなどの市販品を使ったほうがいいですか?
A. そうした製品が市販されていることはお伝えしますが、当院として積極的におすすめしているわけではありません。それよりも、こまめな水分補給や唾液腺マッサージ、そして定期的なむし歯・歯周病の管理を優先していただきたいと考えています。
Q4. 口が乾くのは更年期のせいでしょうか?
A. ホルモンの変化が影響している可能性はあります。ただ、口の乾きは単独で起こるというより、加齢・お薬・歯周病など複数の要因が重なって症状になっていることがほとんどです。「更年期だから仕方ない」と決めつけず、一度お口の状態を診させていただくことをおすすめします。気になる症状は、自己判断せずご相談ください。
子育て世代の方も安心して通院いただけます
当院は「服部矯正小児歯科」という名称ですが、大人の方の診療にも力を入れています。
子育て中の保護者の方も通いやすいよう、平日9時〜16時はお子さんの見守りをおこなっています。保護者の方の診療中は、小児歯科での対応経験豊富なスタッフが、お子さんをマンツーマンで見守ります。
「子どもがいて、自分の通院はずっと後回しになっていた」という方も、どうぞ安心してご相談ください。もちろん、大人の方おひとりでの通院も歓迎しております。
豊田市、みよし市で口の乾き・ねばつきが気になる方へ
口の乾きは、痛みのようにわかりやすい症状ではありません。だからこそ、多くの方が見過ごしてしまいます。
けれども、唾液が減っている状態を放っておくと、歯周病やむし歯が静かに進み、将来的に大きなトラブルにつながることがあります。 大切なのは、定期的に歯周病やむし歯の管理をおこない、重篤になる前に見つけることです。
そして、たとえ加齢やお薬という「取り除けない原因」があったとしても、ご自身にドライマウスというリスクがあると知っておくこと自体に、予防上の大きな意味があります。
豊田市の服部矯正小児歯科では、お口の中の状態と全身の状況を合わせて確認し、一人ひとりに合った対応をご提案しています。「もしかして自分がそうかも」と思うところがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。




